機能性遷移金属酸化物

高度情報化社会を支え、持続可能な社会の構築に向けて、従来の電子デバイスのみならず、資源・エネルギー・環境問題の解決に向けた新しい機能特性を示す材料の開発に大きな期待が寄せられています。 新物質にける新機能の発見は化学、物理、物質・材料科学といった学術分野でのパラダイムシフトを引き起こすのみならず、将来の産業発展を含めて社会を大きく変換させる可能性を秘めています。 無機酸化物は半導体にはない多彩な物性(誘電性、磁性、光学特性、電気化学性、電気伝導性、等々)を示し、多くの新しい機能を実現することができる材料です。特に遷移金属酸化物では、その結晶構造の柔軟性と電子状態の多様性から実に多彩な物性(=機能)が現れます。 遷移金属元素のd軌道と酸素のp軌道との強い混成や、クーロン相互作用、バンド幅、交換相互作用などのエネルギーの拮抗が電子-スピン-格子にわたる多彩な物性を引き出しているのです。

我々が研究対象として注目するのは、この「機能性遷移金属酸化物」です。 「ものづくり」という化学の原点に、ナノサイエンスの視点を加えて発展させて、固体の電子系と原子系の制御を体系的に進めるという固体化学が我々の研究スタイルです。ナノスケールレベルで構造制御された物質の設計・合成・評価を通して、多彩な「物性」の起源である結晶構造や電子状態を解明し、新たな「機能材料」を探索・開発していくことを目標に研究を進めていきます。

研究では、試料合成、結晶構造解析、物性測定、電子状態計算を中心に進めます。 試料合成は、平衡状態図に基づく多結晶体の作成や単結晶の育成、さらには薄膜も含めた多様な手法を用います。 特に、キュービックアンビルセルを用いた高圧下での試料合成や、パルスレーザー蒸着法による薄膜や人工超格子の作成など、独創的な物質合成手法を有しています。 また、結晶構造解析では先端構造評価技術である放射光x線や中性子も利用します。 物性評価では、電気・磁気的特性を中心に測定を行います。 また、より幅広い研究を展開するために、国内外の多くの研究室とも共同して研究を進めていきます。
一連の研究からは、将来のエレクトロニクスやスピントロニクスを発展させる材料やエネルギー・環境問題の解決に資する材料の開発につながることが期待できます。

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