2011 年度
第1回 (5/13)知田 健作(小野研、D2)
"Non-equilibrium edge-channel spectroscopy in the integer quantum Hall regime", C. Altimiras,et al., Nature Physics 6, 34 (2010).

本論文は端状態を流れる電子のエネルギー分光を行ったという実験報告です。本論文の肝はエネルギーフィルターとしてQDを用いた測定手法にあり、これは非平衡端状態における電子の相互作用に関する研究につながります。

第1回 (5/13)遠山 武範(島川研、D2)
"Roll-to-roll production of 30-inch graphene films for transparent electrodes", S. Bae,et al., Nature Nanotech. 5, 574 (2010).

グラフェンとは、ハニカム状に配列した炭素からなる二次元結晶を指す。2004年にA.Geim氏とK.Novoselov氏らによってグラフェンの単離が報告されて以来、グラフェンに関する研究が爆発的に広がった。この物質は、その特異な電子構造のみならず、高い電子移動度、透明性、機械的強靱性等の特徴も持つため、デバイス応用としての研究も盛んに行われている。しかしその作製に関しては、多くの報告がなされているものの未だ決定的な方法はなく、実用化に至るまでにはさらなる研究が必要である。そのようなグラフェン作製研究の一例として、本論文を紹介する。この論文では、30インチの透明グラフェンフィルムをロール法によって作製している。さらに電気特性と光学特性を評価し、グラフェンが透明電極材料ITOに取って代わる可能性があると報告している。

第2回 (5/20)上田 浩平(小野研 D1)
"Extrinsic Spin Hall Effect Induced by Iridium Impurities in Copper",Y. Niimi,et al., PRL 106, 126601 (2011).

著者たちは、面内スピンバルブ構造からCuIr細線に純粋スピン流を注入し、Ir不純物によって誘起される外因性スピンホール効果に関する研究を行った。その 結果、CuIrのスピンホール抵抗率は不純物の濃度とともに線形に増加した。また、Ir濃度1-12 %の範囲でCuIrのスピンホール角が2.1±0.6 %と見積もられ、温 度に依存しないことが分かった。この傾向は、非磁性合金中の外因性スピンホール効果の寄与がskew散乱機構の支配によるものだと示している。

第2回 (5/20)菅 大介(島川研 助教授)
"Above-bandgap voltages from ferroelectric photovoltaic devices", S. Y. Yang,et al., NATURE NANOTECHNOLOGY vol5 FEBRUARY 2010.

光起電力効果は太陽電池の動作原理に関わる現象であり、近年様々な物質系に おいて盛んに研究が行われています。本論文は強誘電体であるBiFeO3薄膜における 光起電力効果について報告したものです。半導体接合を用いた光起電力効果においては、最大で得られる電圧は構成物質のバンドギャップに相当しますが、本論文では強誘電体ドメイン壁における光起電力効果を用いることで、バンドギャップ以上の光起電力の観測に成功しています。

第3回 (5/27)小山 知弘(小野研 D3)
"Femtosecond modification of electron localization and transfer of angular momentum in nickel", C. STAMM,et al., Nature Materials, 6, 740 (2007).

磁気ストレージデバイスが急速に発展し続けている現在、記録容量と書きこみ速度の原理的な限界というものが問題になっている。特に書き込み速度に関しては、スピン角運動量が他の自由度へと散逸していくタイムスケールが重要であり、それはフェムト秒という超高速で起こりうると予想されている。著者らはフェムト秒X線レーザーを用いたポンプ-プローブ測定によって、Niにおけるスピン角運動量の格子系への散逸が120 ± 70 fsというタイムスケールで起こっていることを観測した。

第3回 (5/27)青山 千尋(島川研 M2)
"Mossbauer characterization of 57Fe dopant ions across the insulator-metal transition in ANi0.98Fe0.02O3(A=Nd,Lu)perovskites",Igor Presniakov,et al., Phys. Rev. B 71, 054409 (2005).

異常高原子価イオンとよばれるNi3+イオンを含むANiO3ペロブスカイト型酸化物は、電荷不均化を起こす興味深い性質をもつ物質であることが知られています。FeドープされたNdNiO3の金属-絶縁体転移温度TMIは常磁性-反強磁性転移温度TNと一致し、またFeドープされたLuNiO3のTNはTMIよりも低く、絶縁体と常磁性をもつ中間状態が存在します。本論文では、この二つのタイプのニッケル化合物のTMI以上以下の両方での57Feメスバウアー測定の結果を報告しています。

第4回 (6/3)田辺 賢士(小野研 D2)
"Spin-Seebeck Effect: A Phonon Driven Spin Distribution", C. M. Jaworski,et al.,Phys. Rev. Lett. 106, 186601 (2011).

近年、スピンカロリトロニクスと呼ばれる熱とスピンの関係に興味が集まっている。その代表は2008年に報告されたスピンゼーベック効果(SSE)である。SSEは、ゼーベック効果が温度勾配から電圧が発生する効果に対し、温度勾配からスピンの圧力(スピン圧)が発生する効果である。この効果の面白さはスピンの緩和長がわずか数100 nm以下しかないにもかかわらず、mm単位でシグナルが出る点にある。いくつかの実験や理論において基板のフォノンの影響が指摘されおり、本論文ではその重要性を明確に示している。

第4回 (6/3)関 隼人(島川研 M2)
"Misorientation Control and Functionality Design of Nanopillars in Self-Assembled Perovskite-Spinel Heteroepitaxial Nanostructures", Sheng-Chieh Liao,et al., ACS NANO. VOL.5'NO.5'4118-4122'2011.

本論文では結晶配向や自己組織化ナノ構造の磁気的な物性の制御を基板を論理的に選択することによって行ったものです。結果としてCoFe2O4のナノピラーは様々な形をとり、ピラミッド型、屋根型、トライアングルプラットフォーム型などがあります。ナノ構造を制御できることは、CoFe2O4の磁気的異方性のような機能を制御できることにつながります。本論文は自己組織化ヘテロエピタキシャルナノ構造をコントロールする新たな道を示すものです。

第5回 (6/10)小野 輝男(小野研 教授)
"Nanomechanical detection of itinerant electron spin flip", GUITI ZOLFAGHARKHANI,et al., Nature Nanotechnology 3 (2008)720.

強磁性体Coから非磁性体Auへ電流によって注入されたスピンが緩和することで発生する力学的トルクを測定した論文です。

第5回 (6/10)西原 禎孝(小野研 M2)
"Cooper pair splitter realized in a two-quantum-dot Y-junction", L. Hofstetter,et al., NATURE, 461, 15 October (2009).

量子力学における重要な性質として量子エンタングルメントがある。これまで光子を用いて実験的に検証されたが、応用の面から考えると、固体素子における電子を用いた検証が必要であった。しかし、実験が非常に難しく、未だ検証には至っていない。今回紹介する論文は、超伝導におけるクーパーペアを用いた実験により、エンタングル状態の生成とその対の分離を高効率に行える手法を見出した。著者らはこの実験により、量子エンタングルメント検証への道筋を示したと論じている。

第6回 (6/17)島村 一利(小野研 D2)
"Large voltage-induced magnetic anisotropy change in a few atomic layers of iron", T. Maruyama,et al., Nature nanotechnology, 4, 158 (2009).

近年、強磁性金属の磁性を外部磁界やスピントルクを用いることなく電界で制御しようという試みが行われつつあります。その研究の起爆剤になった論文の一つを紹介しようと思います。著者らは数原子層単位で制御された鉄超薄膜にゲート絶縁膜を介して電界を印加する ことによって、磁気異方性を制御することに成功しています。

第6回 (6/17)島川 祐一(島川研 教授)
"A COMPACT CUBIC ANVIL HIGH PRESSURE APPARATUS", J. Osugi,et al., Rev. Phys. Chem. Jpn. 34, 1 (1964).

今年度、島川研では新物質合成用の高圧合成装置を新たに購入することを検討しています。これを機に、「高圧研究」の歴史を改めて顧みて、最近の高圧発生装置の進展についてレビューしてみようと思います。表題の論文は、高野先生が購入し、現在、島川研で使っている高圧合成装置のオリジナルなデザインを報告した論文で、1964年に京都大学から発表されたものです。1960年代には多くの高圧発生装置が考案され、現在使われている装置のほとんどはこの頃に開発されたものを基にしています。

第7回 (6/24)小林 研介(小野研 准教授)
"Quantum ground state and single-phonon control of a mechanical resonator", A. D. O'Connell,et al., Nature Vol. 464, No. 7289, pp. 697-703 (1 April, 2010).

量子力学は、多種多様な物理系を精密に記述します。しかし、巨視的な力学系(たとえば目で見えるサイズ)に対しても、同じように量子力学が適用できるか どうかという問題は長年の課題となってきました。この論文では、マイクロ波領域で動作する機械的な共振器を用いて、力学モードを基底状態にまで冷却するの に成功したことを報告しています。著者らは、さらに、共振器を量子ビットと結合させ、単一の量子励起状態(フォノン)を共振器中に作りだすことにも成功し ました。この成果は、力学系を完全に量子制御することの第一歩となるものです。※この成果「初の量子機械(”first quantum machine”)」は、米サイエンス誌により「2010年のBreakthrough of the Year」第一位に選定されました。

第8回 (7/1)松本 和也(島川研 D2)
"Phase evolution and critical behavior in strain-tuned LaMnO3-SrMnO3 superlattices", Hiroyuki Yamada,et al., Phys. Rev. B 81, 014410 (2010).

人工超格子薄膜では、複数の異なる物質を組み合わせることによって、単体の物質では見られない物性が発現することがあり、精力的に研究が行われています。本論文では、LaMnO3とSrMnO3を組み合わせた人工超格子において、周期構造が不完全な試料では同一組成の固溶体的な性質が確認されたのに対し、完全な試料では固溶体とは全く異なる振る舞いが現れたことを報告しています。

第8回 (7/1)中野 邦裕(小野研 D3)
"Quantum Spin Hall Insulator State in HgTe Quantum Wells", Markus Konig,et al., Science 318, 766 (2007).

一般に絶縁体というと、バンドギャップが大きく開いた物質を思い浮かべると思います。このような絶縁体を「自明な絶縁体」と呼びます。では、非自明な絶縁体とは一体どのようなものなのでしょうか。近年そのような系が「量子スピンホール絶縁体」や「トポロジカル絶縁体」と呼ばれ、注目を集めています。 今回紹介するのは、上記したトポロジカル絶縁体を始めて実験的に示した論文です。

第9回 (7/8)平井 慧(島川研 M2)
"Design principles for oxygen-reduction activity on perovskite oxide catalysts for fuel cells and metal–air batteries", Jin Suntivich,et al., Nature Chemistry 3, 546–550 (2011).

現在、燃料電池や金属−空気電池などのエネルギー変換機関が注目されています。燃料電池での酸素還元反応(O2 + 4H+ + 4e- → 2H2O)は反応が進行しにくく、燃料電池の高効率化の障害となっています。また、現在のクリーンエネルギーデバイスには白金やパラジウムなどの高コスト金属が用いられていることも普及の妨げになっています。著者らはバラエティに富み費用効率の良いペロブスカイト型化合物に注目し、マンガンまたはニッケルを含むペロブスカイト型化合物が高い触媒性能を示すことを発見しました。

第9回 (7/8)平松 亮(小野研 M2)
"A fast and low-power microelectromechanical system-based non-volatile memory device", Sang Wook Lee,et al., Nature Commun. 2, 220 (2011).

従来のSiベースのフラッシュメモリに取って代わる新世代メモリーデバイスが開発されつつある。この論文では電気機械動作を基本とした新奇不揮発性メモリを実証する。“ON”および“OFF”時の電流は11時間以上一定で、空気中室温下でON/OFFサイクルを500回以上繰り返しても劣化しなかった。複数ビットの書き込みは印加電圧を変化させることで達成できる。またこのデバイスは従来のフラッシュメモリよりも高速動作、低消費電力である。

第10回 (10/7)市川 能也(島川研 特定助授)
"A multiferroic material to search for the permanent electric dipole moment of the electron", K. Z. Rushchanskii,et al., nature mateerials, 9, August (2010).

酸化物 multiferroics が近年注目されているが、それを素粒子の標準模型の検証に使おうという試みである。 著者らは電子の永久電気双極子モーメント(EDM)を固体を用いて研究するために、測定に必要な要求を満たす新しい物質 Eu0.5Ba0.5TiO3 (perovskite 酸化物)を第一原理計算で設計し合成した。本物質のもつべき物性(十分に大きくかつ圧力に依存する強誘電分極・局所的な磁気モーメント・He温度での磁気的無秩序状態など)をまず計算で示し、次に実際に合成して確認した。EDMの検出は緒に就いたばかりだが、上限値5x 10^-23 e cm が得られている。これは固体ベースの EDM 研究における過去の最大検出値の 10 倍以内に収まっている。

第10回 (10/7)荒川 智紀(小野研 D1)
"Using Single Quantum States as Spin Filters to Study Spin Polarization in Ferromagnets", Mandar M,et al., PHYSICAL REVIEW LETTERS, 89, Number 26 (2002).

アルミニウムの微粒子を用いて量子ドットを作成し、その量子ドットの両端にトンネルバリアを介して強磁性体と常伝導体の電極を取り付けて電子の輸送現象を測定している。著者らはこの試料においてクーロン振動の観測に成功している。さらに磁場を印加して量子ドットのスピン縮退を解き、輸送特性を測定することによってアップ、ダウンそれぞれの電子のトンネリングレイトを定量的に評価している

第11回 (10/14)青山 千尋(島川研 M2)
"Metal?Insulator Transitions in Pyrochlore Oxides Ln2Ir2O7", Kazuyuki, M,et al., Journal of the Physical Society of Japan 80 (2011) 094701.

パイロクロア酸化物は、幾何学的なフラストレーションを有し、その特徴的な構造に起因する現象から活発に研究されてきた。例えば、巨大磁気抵抗や異常ホール効果、超伝導、金属-絶縁体転移といった現象が報告されている。本論文では、金属-絶縁体転移を示す質の高いLn2Ir2O7(Ln=Pr→Ho)サンプルの合成に成功し、その物性、特に金属-絶縁体転移の原因の探索を試みている。

11回 (10/14)平松 亮(小野研 M2)
"Electron-Hole Asymmetry of Spin Injection and Transport in Single-Layer Graphene", Wei Han, W,et al., Physical review letters, 102, 137205 (2009).

単層グラフェン(SLG)のスピン依存特性を非局所スピンバルブ測定法で調べた。ゲート電圧依存性では、強磁性体と非磁性体の接触から予測されるSLGの伝導度に比例した非局所磁気抵抗(MR)を示した。SLGの電子とホールのバンドは対称であるのに、ゲート電圧やバイアスに依存した非局所MRで電子とホールで非対称であることが明らかになった。

第12回 (10/21)関 隼人(島川研 M2)
"Noncontact atomic force microscopy imaging of ferroelectric domains with functionalized tips", Mischa Nicklaus,et al., APPLIED PHYSICS LETTERS 98, 162901 (2011).

双極子を持つ分子で修飾した探針を用いて、非接触原子間力顕微鏡で強誘電領域をイメージングする手法を報告する。探針と試料のクーロン的な相互作用は普通 のトポグラフィー像に新たな寄与が加わったものとなる。筆者らはこの考えを説明するために数学的なシミュレーションとLiNbO3の逆平行領域における実験の結 果が一致していることを示す。

第12回 (10/21)千葉 大地(小野研 助教)
"Fast current-induced domain-wall motion controlled by the Rashba effect",Ioan Mihai Miron ,et al., nature materials, vol10, June (2011).

この論文では高速な電流駆動磁壁移動の観測とそのメカニズムについて述べられている。著者らはコバルトの超薄膜を磁性層とした複数のナノワイヤ中の単一磁 壁を用い、電流パルスを印加することで、理論の予測より2倍以上小さい電流密度で400 m/sに迫る磁壁移動速度を観測した。電流を流すことによって発生した ラシュバ磁場が、磁壁の周期的な構造変化を伴わないsteadyな磁壁移動を引き起こしていることを、著者らは考察・検証している。

第13回 (10/28)平井 慧(島川研 M2)
"A Stable Quasicrystal in Al-Cu-Fe System", An-Pang Tsai,et al., JAPANESE JOURNAL OF APPLIED PHYSICS, vol. 26, No.9, September, (1987).

固体は結晶とアモルファスの二種類に分類されると考えられてきたが、準結晶という状態がShechtmanによって発見された。準結晶は並進対称性をもたないもの の秩序性をもつため、結晶では見られない5回対称などを示す。また、これまでに見つかった準結晶は非平衡下でしか得られなかった。本論文では、熱力学的に 安定な準結晶が初めて発見されたAl-Cu-Feの系について報告している。

第13回 (10/28)Kab-Jin Kim(小野研 博士研究員)
"Detection of Domain-Wall Position and Magnetization Reversal in Nanostructures Using the Magnon Contribution to the Resistivity", V.D.Nguyenet al., PRL 107, 136605 (2011).

The authors have introduced a novel technique to detect the magnetization reversal at room temperature. In this paper, The authors have detected the magnetization switching field, magnetic domain wall (DW) position, and magnetization direction of single ferromagnetic layer by measuring magnon magnetoresistance (MMR), which is definitely different from existing techniques such as AMR,GMR and AHE. In addition, the authors have proved that the technique can be used both in perpendicular and in-plane magnetic anisotropy materials. Even though the MMR signal is smaller than the existing (X)MR, it can provide more information, and thus the authors claim that MMR become versatile tool for any scientist realizing transport experiments in magnetic nanostructures.

第14回 (11/4)清水 卓也(島川研 M1)
"Efficient resistive memory effect on SrTiO3 by ionic-bombardment", Heiko G,et al., APPLIED PHYSICS LETTERS, vol99,v092105 (2011).

印加電圧の大きさにより抵抗値がかわる抵抗変化型メモリーはReRAMとよばれ次世代メモリーとして注目されている。SrTiO3結晶にも抵抗メモリー効果を起こすことができるが、一般的には真空アニールによる酸素欠損やカチオンドープがよく行われる。本論文では真空アニールの代わりにArイオンを照射して酸素空孔を生じさせ、その電気特性について報告している。
第14回 (11/4)松尾 貞茂(小野研 D1)
"Quantum interference and Klein tunnelling in graphene heterojunctions", Andrea F,et al., NATURE PHYSICS, vol5, March (2009).

グラフェンでは、価電子帯と伝導帯のバンドがディラック点で交わっている。そのため、ゲート電圧を印加することでグラフェン上にpn接合を作成することができる。本論文で著者たちはグラフェンのディラック電子の特徴的な性質を調べるために、グラフェン上の細いゲート電極を用いてnpn接合やpnp接合を作成し、その伝導特性の結果を報告している。彼らは電子のファブリペロー干渉縞、および磁場を印加してその干渉縞に位相のとびがあらわれることを報告している。

第15回 (11/11)西 仁実(島川研 M1)
"Electric-Field Control of the Metal-Insulator Transition in Ultrathin NdNiO 3 Films", Raoul Scherwitzl,et al., Adv. Mater. vol22, 5517-5520 (2010).

電界効果トランジスター(FET)の一種である電気二重層トランジスター(EDLT)は、従来のFETでは出来なかった大きなキャリア濃度を実現した。これにより、非常に高いキャリア濃度を要するため難しいとされていた金属−絶縁体転移の制御が可能になった。本論文で筆者らは、EDLTを用いてNdNiO3の金属−絶縁体転移の制御を試み、その結果、化学ドーピングや構造相転移によらない、純粋な電界効果による制御に成功したと報告している。

第15回 (11/11)西原 禎孝(小野研 M2)
"Experimental demonstration of information-to-energy conversion and validation of the generalized Jarzynski equality", Shoichi Toyabe,et al., NATURE PHYSICS, vol6, 988-992, December(2010).

熱力学第二法則はほぼ完成された学問であるが、マクスウェルが考えた“悪魔”はそれを破るものであったため、長期にわたって激しい論争がされてきた。しかし、実際のところ第二法則は破れないのだが、そこに含まれる、情報と熱力学の関係を理解することは、昨今の情報社会を生きる上で大変有意義である。今回紹介する論文はマクスウェルの悪魔の定量的なモデルであるシラードエンジンにて用いられている手法を使って、第二法則を記述するジャルチンスキー等式に情報の項を加え一般化したものを実験的に検証したことを報告している。

第16回 (11/18)山田 まりな(島川研 M1)
"Structure and magnetic properties of Ca2Fe1xMnxAlO5+d", M.D. Carvalho,et al., Journal of Solid State Chemistry, vol181, 2530-2541(2008).

Mnを含むブラウンミレライトは低磁場にて巨大な磁気抵抗効果を示すため、研究されてきた。この論文ではCa2Fe1-xMnxAlO5+δ(0≦x≦1)の合成を行い、解析の結果、すべてブラウンミレライト構造を取っていることが分かった。メスバウアー測定と化学滴定の結果から、x=0.5, 0.7の組成においては、空気中での熱処理後、Fe3+よりもMn3+が優先的に酸化されることを結論付けた。著者らは磁性についても測定を行いその結果を報告している。

第16回 (11/18)吉村 瑶子(小野研 M1)
"Direct Observation of Domain Wall Motion Induced by Low-Current Density in TbFeCo Wires", Duc-The Ngo,et al., Applied Physics Express, vol4, 093002(2011).

本論文ではTbFeCo細線における磁壁電流駆動を報告している。4.97×1010 A/m2という低電流密度で磁壁移動速度は28±2 m/sであることが、Kerr顕微鏡によって直接観察された。著者らは、TbFeCoナノワイヤが低消費電力かつ高速動作可能なデバイスとして有望であると述べている。

第17回 (11/25)斉藤 高志(島川研 助教授)
"Synthesis of a metal oxide with a roomtemperature photoreversible phase transition", Shin-ichi Ohkoshi,et al., nature chemistry vol2 july (2010).

光誘起相転移を起こす物質は、光学記憶デバイスへの応用の観点から注目を集めている。本論文では、λ-Ti3O5が室温において光可逆金属-半導体転移を示すことを報告している。これは金属酸化物において室温で起こる光可逆現象として初めての例であり、実用的な光学記憶システムに必要な多くの条件を満たしている。

第17回 (11/25)河口 真志(小野研 M1)
"Transmission of electrical signals by spin-wave interconversion in a magnetic insulator", Y.Kajiwara,et al., nature vol464, 11 March(2010).

電子にある性質のうち、電荷ではなくスピンによって信号を伝える研究が盛んに行われています。このとき利用されるスピンの流れ、スピン流は多くの場合金属中の伝導電子の拡散によって流れます。この場合には、電子の散乱によって概ね数百nmでスピン流が減衰してしまいます。本論文では磁性絶縁体を用い、伝導電子の拡散ではなく、局在した磁気モーメントの協同的な振動によってスピン角運動量を運ぶことで、1mmに渡って信号を伝えることに成功したと報告されています。