金属クラスターの大量合成

直径1 nm程度の金属核を持つ有機配位子保護金属クラスターは、顕著な量子サイズ効果により、バルクやナノ粒子とは異なる新規な物性に基づく機能の発現が期待されている。金属クラスターは、金属核の構成原子数により幾何・電子構造が大きく異なる可能性がある。金属ラスター特有の物性を種々の測定から明らかにするためには、化学的に安定な単一化学組成クラスター(魔法数クラスター)を突きとめ、その選択的大量合成法を開発することが必要となる。。


Au25クラスターの安定性の発見と大量合成
【共同研究】北海道大学触媒化学研究センター 佃 達哉 教授

これまで知られている化学的に安定な1 nm前後のチオール保護Auクラスターの合成法には、NaBH4還元による直接合成法と配位子交換法がある。例えば、NaBH4還元法により直接合成されたグルタチオン保護Auクラスター(Au(SG))では、ポリアクリルアミド電気泳動(PAGE)とエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)により、種々のAu核(Au10、Au15、Au18、Au22、Au25、Au29、Au33、Au39)を有するクラスターが混合物として得られる。一方、配位子交換法では配位子交換前後でAu核を保持しながら大量合成できる可能性がある。そこで我々は、ホスフィン保護Au11クラスター(Au11(PPh3)8Cl3) クロロホルム溶液とグルタチオン(GSH)水溶液からなる二相系での配位子交換反応を行い、PAGE分離およびESI-MS測定で生成したクラスターの精密解析を行った。生成物にはAu11核をもつクラスターは存在せず、Au25(SG)18が選択的に形成されることが明らかとなり、Au25クラスターが化学的に極めて安定であることが示唆された。別途単離したAun(SG)(n = 10、15、18、22、25、29、33、39)を55℃のGSH水溶液中で3時間反応させて吸収スペクトル測定ならびに色変化観察した結果、Au39(SG)はAu25(SG)へ、Au18(SG)はAu(I)(SG)錯体へとエッチングされるのに対して、Au25(SG)はエッチングに対して高い安定性を持つことが分かった。また、スケールアップ後の配位子交換反応により、Au25(SG)18クラスターの大量合成(~70 mg/バッチ)にも成功した。




GSHとの反応前(0 h)後(3 h)のAun(SG)mクラスター
((n,m) = (10,10), (15,13), (18,14), (22,16), (25,18), (29,20), (33,22), (39,24))水溶液の色変化




Au11(PPh3)8Cl3とGSHとの配位子交換反応によるAu25(SG)18クラスターの大量合成

[Ref.] JACS 2005, 127, 13464.; Small 2007, 3, 835.