2.生体膜の構造変化を誘起するタンパク質・ペプチド

 生体膜は、細胞の外と中だけでなく、細胞の中においても様々な「仕切り」として働いています。この生体膜の局所的な構造変化(くびれる、融合する、等)が、細胞の恒常性の維持や増殖、運動に重要な働きを果たすと考えられています。
 近年、こうした構造変化に伴う膜の“曲がり具合”「曲率(curvature)」の制御に関与している様々なタンパク質やペプチドが明らかになってきました。
 私達の目標は、膜の構造変化を介して細胞機能を制御する新しい分子ツールの開発です。研究室の強みであるペプチド・タンパク質合成技術を活かし、「曲率」誘導ペプチドの設計・評価に取り組んでいます。

insertion-curvature:

曲率誘導ペプチド存在下におけるアルギニンペプチドの膜透過促進

 細胞内輸送小胞の形成に関与するタンパク質エプシン由来のペプチド「EpN18」は、膜を傷害性せず、曲率変化を誘導することがわかりました。また、このEpN18と共に細胞に作用させたとき、アルギニンペプチド(図中R8)の膜透過性が上昇することを発見しました(Pujals, ACS Chem. Biol. 2013)。
 このように、細胞膜の構造変化を誘起する合成ペプチドは、薬物の膜透過性を調節する新技術などに応用できるかもしれません。

R8-translocation: