流動場下における結晶化
繊維構造生成機構の解明を目指して

 流動場で高分子を結晶化させると「シシケバブ」と呼ばれる特異なモルフォロジーが観測される。伸張鎖からなるシシと折畳み鎖結晶ラメラからなるケバブからできると考えられている。この構造は、高弾性率・高強度繊維の分子構造的起源であると考えられているので、多くの研究が行われてきた。しかし、その生成機構が解明されておらず、どの高分子でもシシケバブ構造をうまく生成できるわけではない。本研究では、光散乱(LS)、放射光X線散乱(SAXS, WAXS)、中性子小角散乱(SANS)、光学顕微鏡(OM)などの手段を用い、オングストロームから数十マイクロメートルの広い空間スケールでシシケバブ構造の生成過程を時間分割測定で追跡し、その機構解明を目指している。
広い空間でのシシケバブの時間発展 超高分子量成分の効果

偏光解消光散乱における超高分子量成分の濃度効果。臨界濃度が存在する。
シシケバブ構造の
模式図
偏光解消光散乱(上)、小角X線散乱(中)、広角X線散乱(下)により測定したiPPのシシケバブ構造生成過程

シシケバブ生成には臨界のせん断速度やせん断ひずみが存在し、緩和の役割が大きいことが示された。
重水素化ラベル法による小角中性子散乱により、超高分子量成分がシシを形成していることが明らかになった。
Polymer, 46, 1878 (2005)
Polymer, 47, 5669 (2006)
Macromolecules, 39, 7617 (2006)