京都大学化学研究所

生体分子情報研究領域

COP9シグナロソームを介して制御される植物形態形成の研究

COP9シグナロソーム(CSN)とは?

 双子葉植物は光があるところでは、双葉が展開して、本葉を作り、花を咲かせる「光形態形成(photo-morphogenesis)」のプログラムが起動します。一方、暗所ではいわゆるモヤシになって双葉は開かず、胚軸ばかりが伸び「暗所形態形成 (skoto-morphogenesis)」のプログラムが起動します。つまり「光」という環境情報に依存して全く異なる二つのプログラムが起動するわけですが、この間のスイッチを担うのが『COP9シグナロソーム (CSN)』です。CSNの機能が欠損した植物は、暗所でも光形態形成が進行しますが、本葉を作る分裂組織が維持できずに致死となります(Serino et al., 1999, Plant Cell)。

 詳細な解析の結果、植物においてCSNが、タンパク質の分解系を制御して、 葉形成、花芽形成、植物ホルモン制御、耐病性など、生存の根本に関わることが明らかになりました。さらに面白いことに、植物で発見されたCSNが、ハエ、線虫、マウス、ヒトと真核多細胞生物のほとんどに存在することが明らかになりました(Wei et al., 1998, Curr Biol)。動物には植物のように、光とかたち作りの間に相関が無いので、CSNは一体何をしているのでしょうか?

 近年、ヒトでもCSNが情報伝達を制御して細胞周期をはじめとするかたち作りに関わることが明らかになってきました。つまり、植物で発見されたCSNは、生物に共通する重要な情報伝達のレギュレーターだったのです(Lyapina et al., 2001, Science ; Tsuge et al., 2001, J Mol Biol ; Tsuge et al., 2011, Protein Cell )。我々は、遺伝子組換え植物系のメリットを最大限に生かして、変異体や形質転換体を駆使して、動物ではできないCSNの機能の解析を「個体レベルで」展開しています。さらに、動物の系をもつ研究グループと相補的に研究を進めて、CSNが担う生物における機能を詳細に解明しています(Menon et al., 2008, BMC Biochem; Aki et al., 2011, Plant Cell Physiol)

 今まさに、CSNの新しい制御メカニズムが明らかになろうとしています。

 

 

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