前駆体が発現するリオトロピック・スメクチック液晶の熱力学的性質および層構造が表面から積層成長する性質を利用して,垂直配向を達成します.垂直配向した前駆体は配向を維持してポリイミドに変換され,剛直高分子の垂直配向が実現します.剛直高分子は基板面に平行に配向する傾向が極めて強く,このような垂直配向膜の作製は,これまで困難とされてきました.垂直配向したポリイミドは面外に高熱伝導性を有する高性能の絶縁層に応用できます.
Polymer, 2023, 281, 126100
Polymer, 2025, 325, 128267
ポリイミドとポリジメチルシロキサン(PDMS)を共重合したマルチブロック共重合体は,PDMSがポリイミド母相中で偏析したnmスケールのドメイン構造を形成します.このPDMSナノドメインは昇降温によって可逆に負熱膨張を示すことを見出しました.これにより,従来はトレードオフの関係と見なされてきた「柔軟性」と「低体膨張率」を同時に実現する,新規のポリイミドフィルムを得ることができました.微細化とフレキシブル化が進む各種の集積回路の絶縁層に最適な材料になると期待されます.
Macromolecules, 2025, 58, 12, 5979–5989
スメクチック液晶相においては基質が向きをそろえて層(二次元)に閉じ込められるために,固体であっても高い反応効率が得られます.この性質を利用して,リオトロピック・スメクチック液晶を発現する前駆体に架橋性基を導入し,効率的に架橋を導入したフィルムを調製できます.
集積回路の絶縁層に適用される高分子には高い熱伝導性が要求されますが,高分子は分子鎖間に隙間があるために,一般に熱伝導が低いとされています.一方で,分子鎖が高度に配向した高強度ポリエチレン繊維は冷感寝具に使用されるほど,熱伝導が高いことが知られています.このように,高分子の高次構造と熱伝導性の相関は必ずしも明確にはなっていません.
液晶分子にキラル(光学活性)部位を導入することで,メゾスケールのらせん構造を形成するコレステリック液晶などのキラル液晶を得ることができます.リオトロピック液晶性前駆体にキラル側鎖を導入し,らせん構造を固定化したポリイミドフィルムの作製を目指しています.
剛直高分子の前駆体の溶媒には高極性のアミド系溶媒が用いられますが,欧州ではこれらの溶媒の使用規制が進んでいます.石毛研ではクリーンな環境で製膜可能な水溶性のポリベンゾオキサゾール(PBO)前駆体の配向制御に取り組んでいます.