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最近の研究成果

局所還元によるSrTiO3の微小領域発光

SrTiO3は電子ドーピングにより絶縁体から、半導体、金属、さらには超伝導までまで変化する実に興味深い物質です。 また、大きな単結晶が得られることから、酸化物薄膜をエピタキシャル成長させる時の基板としても広く使われています。 このSrTiO3にArビームを照射することで、局所的な還元領域を作り出し、局所金属化することに成功しました。 金属化したSrTiO3ではTiの3d軌道に電子が入ることにより、バンドギャップ中に青色発光を引き起こすドナーレベルが生じます。 この手法を用いると、Arビームで描いた微小な青色発光素子を作成することが可能になり、新しい酸化物オプトエレクトロニクスデバイスへと広がっていくことが期待されます。
(この成果は高野研究室との共同研究により得られたものです。)

[ 代表的な論文 ]
"Blue-light emission at room temperature from Ar+ -Irradiated SrTiO3", D. Kan, T. Terashima. R. Kannda, A. Masuno, K. Tanaka, S. Chu, H. Kan, A. Ishizumi, Y. Kanemitsu, Y. Shimakawa, and M. Takano, Nature Materials4,  816-819 (2005).


大きな残留分極を示す可能性を持つペロブスカイト構造酸化物

Bi、Pbなどの不対電子を持つイオンを含んだペロブスカイト構造遷移金属酸化物では6s軌道にある 不対電子に起因する構造の歪みが強誘電性を引き起こします。高圧下での物質合成法を用いることにより、 常圧では合成することができないPbVO3やBiCoO3などの新しいペロブスカイト構造酸化物を得ることに成功しました。 得られた物質はPbTiO3と同じP4mmの対称性をもつ正方格子であり、 結晶構造解析の結果を基にした単純なイオンモデルから考察される変位型強誘電体としての分極はPbTiO3を超える大きなものである可能性が見出されました。 このような大きな分極を示す可能性のある化合物が新たに見つかったことで、今後の薄膜メモリなどの材料探索にも新しい可能性が拓けたことになります。
(この成果は高野研究室との共同研究により得られたものです。)

[ 代表的な論文 ]
"Crystallographic Features and Tetragonal Phase Stability of PbVO3, a New Member of PbTiO3 Family", A.A. Belik, M. Azuma, T. Saito, Y. Shimakawa, and M. Takano, Chem. Mat.17, 269-273 (2005).


新しい強磁性強誘電体: Bi2NiMnO6二重ペロブスカイト構造酸化物

磁性と誘電特性を併せ持つ材料(multiferroic materials)が強い関心を集めています。 我々は、二重ペロブスカイト構造酸化物がBi2NiMnO6が新しい強磁性強誘電材料であることを見出しました。 この物質では、Biイオンの不対電子により中心対称のないC2対称性を示す強誘電的な構造歪みが引き起こされ、またBサイトにある遷移金属イオンが磁性を担います。 特に、この物質ではNi2+とMn4+を含んだ酸素八面体がNaCl型に3次元的に配列し、Ni2+ (d 8: S = 1)とMn4+ (d 3: S = 3/2)のイオン間にKanamori-Goodenough則に従う強磁性的な相互作用が働きます。 興味深い物性を示すこの材料は高圧合成によって初めて合成が可能になりました。 BiやPbを含んだペロブスカイト構造酸化物に2種類の磁性イオンを組み合わせて強磁性を発現させるという物質設計のアイデアは更なる物質開発の端となるものです。
(この成果は高野研究室との共同研究により得られたものです。)

[ 代表的な論文 ]
"A Designed New Ferromagnetic Ferroelectric Bi2NiMnO6", M. Azuma,K. Takata, T. Saito, S. Ishiwata, Y. Shimakawa, and M. Takano, J. Am. Chem. Soc.??,  J. Amer. Chem. Soc. (2005).


ペロブスカイト構造Mn酸化物での高密度スピン偏極電流の印加による相転移

ペロブスカイト構造Mn酸化物では、スピン−電荷−軌道が複雑に絡み合い多彩な物性が出現します。 La0.67Ca0.33MnO3エピタキシャル薄膜では、低温において電荷整列による絶縁体相(COI: Charge-ordered insulator)と 強磁性金属相(FMM: Ferromagnetic metal)へとミクロスコピックなスケールでの相分離が起こります。 この薄膜に微細加工を施してして電流を印可すると、非可逆かつ大きな抵抗変化が起こることを見出しました。 これは、高密度のスピン偏極した電流を注入することで、COIからFMMへの一次の転移を誘起したものとして解釈できます。
(この成果は高野研究室との共同研究により得られたものです。)

[ 代表的な論文 ]
"Current-induced electroresistive effect in mixed-phase La0.67Ca0.33MnO3 thin films", A. Masuno, T. Terashima, Y. Shimakawa, and M. Takano, Appl. Phys. Lett.85, 6194-6196 (2004).