元素置換科学による未踏構造ナノ粒子の合成と新奇機能の開拓

貴金属ナノ粒子は優れた機能材料であり、dバンドセンターがフェルミ準位より数eV低いという貴金属の本質的なバンド構造が高い触媒能や貴金属物性を決定しているため、貴金属の縛りから脱却することは大変困難なように思われます。従来の貴金属性能を凌駕する新奇ナノ物質を創出するためには、簡易な方法で資源の豊富な低周期dブロック元素の基底電子構造(バンド構造、フェルミ準位、欠陥準位)を自在に変調する必要があります。無機ナノ粒子は高比表面積のため元素置換反応が進行しやすく、低周期dブロック元素の基底電子構造変調が可能です。低周期dブロック金属ナノ粒子では、pブロック元素の導入や低酸化還元電位金属との元素置換(ガルバニック置換)による合金化により電子構造を大きく変調する可能性があります。また、低周期dブロック金属からなるヘビードープ半導体ナノ粒子では、元素置換(イオン交換)により結晶構造・電子構造を部分的に変調させることで、貴金属ナノ粒子では困難な全近赤外光エネルギー変換ヘテロ構造ナノ粒子群を創製することができます。


イオン結晶ナノ粒子のイオン交換による新規構造の創出


Cu7S4ナノディスクの陽イオン交換によるCdSナノディスクの生成
Chem. Eur. J. 2012, 18, 9230. (Frontispiece))


六方晶CdSナノ粒子の陰イオン交換による六方晶CdS-立方晶CdTeヘテロ構造ナノ粒子、立方晶CdTeナノ粒子の生成
J. Am. Chem. Soc. 2011, 133, 17598; Chem. Sci. 2014, 5, 3831; J. Phys. Chem. Lett. 2014, 5, 2951.)


アニオン交換反応によるCu2Oナノ粒子からの仮晶ナノケージの生成(Science 2016, 351, 1306.)