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研究内容
 私たちの研究室では、植物の成長や形態を制御する微量低分子信号物質(植物ホルモン)が、植物体内でどのように作られ(生合成)、どのように作用するのか(受容、信号伝達)を研究しています(図1)。
 特に、成長ホルモンである「ジベレリン」(研究課題1)の生合成調節機構とその生理活性を制御する新規修飾酵素の機能解明に取り組んでいます。 また、「ストリゴラクトン」(研究課題2)と呼ばれるテルペノイド化合物が地上部の枝分かれを制御する新しいホルモンとして機能することを発見し、その生理機能と生合成・信号伝達経路の解明を目指した研究を進めています。 さらに、突然変異体の解析から示唆されているさらなる新規低分子信号物質(ホルモン様物質)の探索(研究課題3)にも取り組んでいます。
 これらの研究から得られる知見をもとに、植物ホルモン関連遺伝子、突然変異体およびケミカルを利用し、植物の成長や形態を質的、量的にコントロールするための技術開発を目指します。

研究課題
1. 植物成長ホルモンである「ジベレリン」の新規修飾酵素の機能解明
ベレリンは、種子発芽や茎の伸長を促進する植物ホルモンです(図2)。ジベレリンは農業においても重要な植物ホルモンで、1970年にノーベル平和賞を受賞した「緑の革命」と呼ばれる農業革命において使用された半矮性遺伝子は、ジベレリンの生合成や情報伝達に関連するものでした(図3)。また、種無しブドウの生産にも、ジベレリンが使用されています。
しかし、ジベレリンの内生量調節機構には未解明の部分が残されており、私たちはその全容解明を目的として、イネより発見されたジベレリン新規修飾酵素の機能解析に取り組んでいます。

2. 植物の枝分かれを制御する新しいホルモン「ストリゴラクトン」の生合成と作用メカニズムの解析
ストリゴラクトンは、私たちが世界ではじめて植物ホルモンであることを明らかにした物質で、植物の地上部の枝分かれなどを制御します。また、ストリゴラクトンは、植物の栄養吸収を助けるアーバスキュラー菌根菌と植物との共生を促進する一方で、農業に深刻なダメージを与える寄生植物の種子の発芽を誘導してしまいます(図4)。
そのため、ストリゴラクトンの植物や微生物に対するシグナル物質としての作用機構を明らかにすることは、最終的に、作物収量の増産や寄生植物の防除を可能とする新しい農業技術の開発にもつながります。
私たちは、ストリゴラクトンの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子やタンパク質、低分子化合物に注目し、ストリゴラクトンが植物ホルモンとして機能するメカニズムの解明に取り組んでいます。

 3. 植物の成長や形態を制御する新規ホルモン様物質の探索
植物ホルモンのはたらきに異常が生じると、植物の形態が大きく変化します。私たちは新しい植物ホルモンを発見するため、既知の植物ホルモンでは説明のつかない形態を示す変異体に注目して、その原因の解明に取り組んでいます(図5)。
およそ30年前の教科書で植物ホルモンとされたのは、オーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、アブシジン酸、エチレンの5種類でした。現在では、ブラシノステロイド、ジャスモン酸、サリチル酸、そして私たちのストリゴラクトンが植物ホルモンの仲間に加わっています。私たちと一緒に、新しい植物ホルモンを見つけてみませんか?