本研究室では、主に量子ビーム(放射光X線や中性子など)を用いてソフトマター材料の高次構造解析を目的としています。特に小角散乱法/広角回折法によって、オングストロームからミクロンスケールまでの幅広いサイズの構造を精密に調べることに取り組んでいます。測定対象は、主に高分子のバルクから薄膜まで幅広い材料をターゲットとしており、特に自己組織化の研究を行っています。
自己組織化とは原子や分子が自ら構造を形成する現象です。この高分子材料の自己組織化を解明・制御する事によって、様々な分野で使われている高分子材料の高機能化を図るとともにSociety 5.0 に向けた高分子材料の新しい分野への応用を目指しています。例えば、タイヤ、有機ガラス、電子デバイス材料と一見関係なさそうなものであっても、いずれも自己組織化により形成される構造の制御が重要であると考えています。これらの自己組織化を形成する過程は、時間スケールが非常に速いことや様々構造スケールが複雑に絡み合っています。
量子ビームによる散乱・回折法では、様々な空間スケールでの速い自己組織化過程を解明することが可能になります。そのため、主にSPring-8などのシンクロトロン放射光施設の強いX線やJ-PARCの中性子を用いて実験を行っています。これらの実験により得られたビッグデータを解析することで、高分子材料の物性向上のための要因を構造という観点から明らかにしています。さらに最近では、自己組織化だけでなく、高分子材料の破壊現象にも取り組んでいます。これらの構造解析のために、新規の測定手法や測定装置の開発も行っています。